『ま、あの子が拒む理由もわからなくはないんだけどね……』
「それはどういう意味?」
『ここのところ、連日のように病院へ運び込まれても治療という治療はできていないからよ。入院したところで治療ができるわけじゃないなら入院したくない――そういうことよ』
「……それなら、自宅でもいいんじゃないの?」
『……もう、その域を出てる。カロリーも水分も足りてないのよ。このままだと飢餓状態が続いて脳にも内臓にも障害が出はじめる』
「っ……なんで無理にでも入院させないっ!?」
『……できることならあの子の意思で入れたい。そのほうがのちの家族関係や人間関係に響かない。私、これから栞と空港まで昇を迎えに行ってくる。午後過ぎには幸倉に戻れると思う。それまでに説得お願いできるかしら?』
「もちろん。……司は?」
 ここでどうして司の名前を口にしたのかは自分でもよくわからない。
『それが、再三携帯を鳴らしてるんだけど出ないのよね。たぶん学校だとは思うけど』
「……あれ? マンションに帰ってきてるんじゃないの?」
『お母様が熱を出したの。ハナの散歩要員も含め、実家に帰ってるわ。それと、バイタルの送信を打ち切ったことを不満に思ってる。口にはしないけどね……』
 なるほど……。