頼られる対象に入れてもらえることはないと思ってるから、いつだって人の手を借りるたびに引け目を感じていたのだろうか。
 俺たちは、少しでも翠葉の負担にならないように、とただそれだけを考えてきた。
 でも、それがいけなかったのか……?
「蒼樹さん?」
「あ、ごめん……。少し、翠葉のことを勘違いしてたのがわかった気がして……」
 車を発進させると、母さんのことを少しずつ話した。
 数年前――翠葉の体調のことで気を病み、精神科にかかるほどの鬱状態だったことを。
 気丈に振舞っていても、実はそんなに強い人間ではないこと。
 翠葉のことでは家族の中で一番ダメージを受ける人であること。
 翠葉の負担を増やしたくないから現場に戻した。それは嘘じゃない。
 けれどもうひとつ……。
 母さん自身の精神状態を維持させるためにも、翠葉に付きっ切りになるのは良くないと思ったから。
 それは父さんも同意見だった。