シャワーを浴びて用意を済ませると、一度翠葉の部屋へ立ち寄った。
「寝てるよ」
 小さな声で唯が教えてくれる。
 天蓋の中には寝ているはずなのに、肩で息をしているように見える翠葉がいた。
「じゃ、行ってくる」
 部屋を出てドアを閉める。
 その行動にも慣れはしたけど、未だに違和感がある。
 あれほど部屋のドアを閉められることを嫌がっていたのに……。
 閉めたドアを見つつ、玄関へ続く廊下を歩いた。
 玄関を開けると、家の前に車が停まったところだった。
 先輩だ……。
 玄関のドアにはドアストッパーを噛ませて階段を下りる。
 車から出てきた先輩はいつもと変わらないように見えたけど、見えただけだった。