あのとき、目の前にいたのは藤宮湊という医師なのか、それとも先輩の従姉というひとりの友人なのかがわからなくなった。
「秋斗さん、来ても大丈夫なんかね?」
 ヤンキー座りの唯がポツリと口にした。
「さぁ……もう、凶と出ても吉と出ても、大差ないんじゃないかな」
「それもそうか……」
 生ぬるい風が頬を撫でていく。
「俺、シャワー浴びてくるわ」
「ラジャ」
 なんとなく、人の爪を見るのが癖になっていた。
「唯……爪が白い。おまえもスポーツ飲料飲んでおけよ」