翠葉の部屋を出るとダイニングテーブルにスープカップを置いて家を出た。
 何かから逃げ出すように走り出し、気がつけばいつものランニングコース――運動公園に来ていた。
 ゴールデンウィークに翠葉と桃華とインハイ予選を見にきて弁当を食べた場所――藤棚の下にあるベンチ。
 あのときは芝生に座ったんだったな……。
 そんなことを思い出していた。
 走ったこともあり、汗がとめどなく流れる。
 ベンチから少し離れた場所に水飲み場があり、頭からざーっと水をかぶった。
 しばらくそうしているうちにだいぶ冷静になれた気がした。
「俺、何してるんだろ……」
 感情的になったところで何も変わりはしないのに。
 そんなこと、俺も翠葉もわかってる。
 つまり――翠葉もぎりぎりのところまで来ているけれど、俺自身も限界ってことだ。