四限が終わり、すぐに教室を出る。
 二階へ着くと、数人が教室から出てきた。
 ドア口に立つと、クラスの人間の大半が翠の周りに集っている。
 きっと、何かしら訊かれているのだろう。
 翠が困った顔をしていないから静観。
 すると、俺に気づいた翠が俺の名前を口にした。
 周りの人間も俺に視線をやり、"お開き"を悟ったらしい。
 簾条が付き添い廊下までやってくる。
 翠が自分で押していた点滴スタンドを取り上げ、翠の腕を掴む。
 支える手に少し体重がかけられた。
 今は素直に支えられてくれる、ということだろうか。
「……待っててくれたんですか?」
 それ以外に何があるのか教えてほしい。
「姉さんからの厳命」
 一言だけ口にすると、翠は納得したような顔になった。