海斗たちが問題なくフォローするであろうことはわかっていた。
 けど、翠に会いたいという自我には勝てず、結果こうして翠が廊下に出てくるのを待っている。
 海斗と簾条あたりが付き添っているかと思いきや、海斗ひとりだった。
 ドアを閉める瞬間に簾条と目が合った。
 悠然と浮かべる笑みがむかつく。
 たぶん、俺がここで待っているのを予想していたのだろう。
 内心、舌打ちをしたい気持ちで翠の腕を取る。
 その腕が、ずいぶんと細くて驚いた。
 一瞬、腕と手首を間違えたかと思うほど。
「ふたりとも、ごめんなさい。本当は自習したい時間なのに……」
 翠が申し訳なさそうに眉をひそめる。
「俺は問題ない」
 海斗も似たり寄ったりの返事をすると、翠はほんの少し笑みを見せた。