光のもとでⅠ

「栞ちゃん、今年は少し早くない?」
「そうね……。翠葉の存在がより"子ども"というものをより強く感じさせるのかもしれないわ」
「……翠葉ちゃんは知ってるの?」
「まさか、夏風邪って言ってある」
「そう……」
 栞ちゃんは毎年七月の下旬になると情緒不安定から体調を崩す。
 それも、ここ二年くらいの話だ。
 流産した日が近くなると不安定になる。だから、その頃までには昇さんが帰国する予定だった。
 だが、今年は七月の頭から体調を崩している。
「大丈夫よ。昇が今月の半ばには帰国するから」
 言いながら湊ちゃんが立ち上がった。
「さ、コーヒーでも飲もう! アルコールでもかまわないわよ?」
 飲むったってまだ夕方だし、すきっ腹……。
 それに俺、涼さんからコーヒーもアルコールも禁止令食らってんだけど……。