「久しぶり……ってわけでもないよな。ま、どうぞ」
 部屋の中へ招き入れると、楓はテーブルを見て
「先に食事して」
 言われてテーブルに着くものの、非常に落ち着かない。
「今日、休み?」
 まるで日本語を忘れたみたいに片言で話す。と、
「出勤前」
 同じように片言が返ってきた。
 楓が電気ポットの周りに視線を向けていることに気づき、
「コーヒーならないけど?」
 親切に声をかけたつもりだったのに、「当たり前」の一言が返される。
「ハーブティーならそこにあるけど」
 楓はそれを視界に認めると、ひとつのパックを手に取った。
 ……本当に何しに来たんだか……。