「そう、こんな二者択一は初めてだ」
「わかった。がんばってみる」
 唯はにこりと笑った。
 当たり前だけど、翠葉と唯の顔は似てないし雰囲気だって全然違う。
 でも、こんな笑い方はどこか似ている気がする。
 こっちが救われるような笑顔……。
「で、なんでこのクッキー? 俺に、かなぁ?」
「あぁ、それ、翠葉が好きなクッキーなんだ」
「へぇぇぇぇぇ……。本当に俺は宛名に使われて開けるだけの役で、中身はあんちゃんとリィ宛てってわけね……」
 瞬時にどす黒いオーラを放った。
 天使の笑顔はどこへやら……。
「あとで……十二時前にでも三人でお茶でも飲みながら食べよう。そのときに秋斗先輩の名前を出して翠葉の反応を見るよ」
「……結局、どこまでも過保護だね」
「そうだよなぁ……。なんとかしないとな」
 苦笑して答えたけれど、どうにかできるのかはまだ謎の域。
 でも……翠葉、一緒に少しずつ前へ進もう――。