光のもとでⅠ

「一、二、三、四、五、六、七、八、九、十――」
 翠、どうしようもなく自分がコントロールできなくなったら数を数えろ。
 一から十まで一定のリズムで、落ち着くまでずっと。
 人間何かひとつのことに集中しようとすると、落ち着きを取り戻す。
 深く息を吸って吐き出して、十秒数えたら視界が変わる。
 翠はそんな術を身に付けたほうがいい。
「……長い睫」
 閉じられた目を縁取る睫が頬に影を落とす。
 ……その睫にマスカラなんて塗るな。
 ただでさえ大きな目を、それ以上大きく見せてどうするんだ。
 全校生徒を巻き込んでの誕生会――あのとき、きれいなんて言えなかった。
 翠を見た瞬間、ほかの人間に見られる前に隠したいと思った。