光のもとでⅠ

 ――警戒されていない。
 俺が秋兄よりも優位なことはただひとつ。
 翠に警戒されていないこと、それだけ。
 確認が終わったあとでも翠は手を放そうとはしなかった。
 俺は手を出しただけで、そこに重ねて手を握っているのは翠自身。
 呼吸がそれ以上ひどくなることはなく、薬のせいか、少しずつ少しずつ、翠の瞼は閉じていった。
 俺が翠にしてやれることには何があるだろう。
「避難所、かな……」
 別にそれでもかまわない。
 翠が自分から俺に寄ってきてくれるなら。
 避難所でもなんでもやってやる。
 時には暗示だってかけてやる。