光のもとでⅠ

 そんな自分を落ち着かせるため、深く息を吸い込んでから擦過傷が治ったばかりの首へと移る。
 傷は治っているし痕も残っていない。
 けれど、どうしてか触れることに慎重になる部分。
 だから、確認をするように軽く手を乗せた。
「首は大丈夫みたい……」
「少しずつ力を入れるから」
 首の靭帯に親指を沿わせる。
 人間の身体の中で、もっとも医者泣かせと呼ばれる靭帯――頚椎後縦靭帯。
 翠の場合はこのあたりの筋肉が硬直して頭痛につながっているのだろう。
 首から肩へと手を移動させると、
「い、やっ――」
 搾り出すような声で急に身体が硬直した。
 咄嗟に身体から手を離す。