光のもとでⅠ

 あの部屋にひとりでいることがどれだけつらいのか絶対に知らないんだ。
 治療の時間が迫ってくる恐怖だとか、夜の就寝時間後に訪れる不安だとか――。
「だから、嫌なのっっっ。白い部屋、四角い窓、窓から見えるだけの外。空調完備された屋内っ。全部嫌っ」
 息は上がるし、声を発するのもつらい。
 失神できるなら今すぐ失神してしまいたい。
「……壁紙変えてやろうか? それとも空調止める? この季節かなり暑いと思うけど。熱中症になっていいならそうする。たまになら、俺が屋外に連れ出すけど?」
 え……? この人、何を言っているの……?
「別に無理なことじゃない。それで病院へ行ってもらえるならお安いご用」
 さも、なんてことないように話す。
「先輩、本当にムカつく……」
 嫌いなものを並べたところで、足元を掬われた気分だ。
 藤宮の人ってみんなこうなのかな。
 優しいのか、強要するためにどんな手でも使うのか、わからない。
「……嫌い……嫌い、大嫌いっっっ」
「翠、理系なのは認める。でも、悪口雑言の語彙が少なすぎ。そこの国語辞書取ってやろうか?」
 と、壁に備え付けられている棚を指す。