「どうして出ていかないの?」
 仕方がないから顔だけドアの方へ向けた。
 そこにはきっちりと制服に身を包んだ先輩が立っている。
「翠、何してんだよ……」
 いつもの低く静かな声ではなく、怒気をはらんだ声。
 臨戦態勢――。
 この人も説得要員か……。
「何って……具合が悪いから横になっているだけ。ただ、それだけです」
 だいぶ息が整ってきているとはいえ、やっぱり普通に話すのはつらい。
「ここでできる処置なんて限られてる。病院へ行け」
「……司先輩も説得要員?」
 もう、いつものように穏やかになんて笑えはしなかった。
 私、もう限界なのにどうして――。
 どうして畳み掛けるように人を入れるのっ!?
「病院へ行ったほうが早く楽になれる」
「……それで?」