あぁ、きっと眠らせてでもなんでも連れていくつもりなのだろう。
「そしたら、もう――誰とも、口利かない」
「それでも連れていく」
 声に芯のある強い響きをしていた。
 湊先生らしいな、なんて思ったけれど、身体が限界まできていた。
「おねが……少し、休ませて……」
 そう言うと、湊先生は何も言わずに部屋を出ていった。
 ドアの閉まる音にほっとして目を閉じる。
 相変わらず呼吸も痛みもつらいけれど、今はこの部屋にひとり……。
 誰に気を遣うことも、痛くて泣くことも憚られない。
 もうどのくらいお風呂に入っていないだろう……。
 頭が痒い。
 急激に汗をかいたりするから身体が気持ち悪い。
 もっと違うことへ意識を持っていきたいのに、どんどんつらくなる。
 だから、楽しいことを思い出そうと思った。