突如痛みが走る。
「しっかりしなさいっっっ」
「痛いっ……離して」
 未だに肩での呼吸が続いていた。
「少し前、痛み、ひどくて……やっと少し、楽になった、の……。休み、たい……。ほかの人も、部屋に、入れないで……。音が、いや……。何か、言われて、頭、使うのも、や……」
「……翠葉、病院へ行こう」
「……いや。病院は、治療する、ところ……。緩和ケアなら……ホスピス? でも、この痛みで、死ぬこと、ないから……ホスピス、対象外?」
「あんたは死なないっ。死なせないし絶対に楽にさせてあげるからっ。もうちょっとがんばってよっ」
 もうちょっともうちょっと――。
 あと少し、梅雨が明けるまで――。
 どのくらいそう思ってこの痛みに耐えてきたと思ってるの?
 そのうえまだ耐えろと……?
 毎日毎日生き地獄なのに? 梅雨は明けたのに?
 今度は何を待てばいいの?
「今日は何がなんでも病院に連れていくつもりよ」
 先生の声のトーンが下がった。