「……翠葉は翠葉で色々と考えているようだけど、これだけは言っておく。つらいからって逃げるな。死に急ぐな。言われたとおりに母さんは現場に連れて戻ろう。でも――湊先生にはお願いしておく。どんなに拒まれても、これ以上は危険だと思ったなら、どんな手を使ってでも病院へ運んでもらえるように。それはほかの誰の意思でもなく、父さんの意思だ。恨むなら父さんを恨んでいい。恨まれるだけで娘を失わずに済むのなら、どれだけ恨まれてもかまわない」
 そう言うと、お父さんは部屋を出ていった。
 お父さんとこんなやり取りをしたのは初めてのことだった。
 湊先生はそのことも知っていて、毎日のように足しげく通ってくるのだろう。
 それでも、まだ私の意思を尊重してか、無理矢理病院へ連れて行くようなことはしなかった。
 ただ、うちに来てはどうでもいい話をして、点滴が終われば帰っていく。
 話の中には"入院"という言葉もあったけれど、無理強いされることはなく、懸命な説得に留まっていた。
 それが数日続くとぶち切れた。
 毎日ぎゃんぎゃんと私を説き伏せるように言って聞かせるようになってきた。