家に帰ってきてからは、私が寝ていない時間はずっとお母さんが側についていた。
 特別な話はしない。天気の話から他愛もない話をするだけ。
 でも、楽しいと思えたし幸せだと感じた。
 お母さんは私の話に出てくる桃華さんと司先輩に会えたことが嬉しかったみたい。
「司くん、格好いいわねぇ? 湊先生とそっくりでびっくりしちゃったわ」
「寝起きだと湊先生と司先輩が咄嗟に判断できなくて、何度も絶叫しそうになった」
 そんな話をすればお母さんはクスクスと笑う。
 その会話に唯兄が混じり、さらに大きな笑いへと発展する。
 途中、栞さんから電話があり、明日から復帰できる旨を伝えられた。
「じゃぁ……私は現場に戻るわよ?」
 最後の確認のように言われた。
「うん。お仕事がんばってきてね。私もがんばるから」
 お母さんは何も言わないけれど、すごく不安そうなのが見て取れる。