このままここにいても、みんながお昼ご飯を食べることができない。
「じゃ、私はこれで早退だから」
 と、その場を離脱しようと立ち上がると、人垣の向こうに涼やかな顔をした司先輩が立っていた。
「司、先輩……?」
 ……待っててくれたのかな。
「翠葉、保健室まで送るわ」
 桃華さんが立ち上がり、私の持っていた荷物を引き受けてくれた。
 自分で点滴スタンドを押しながら後ろのドアまで行くと、何も言わずに先輩が点滴スタンドに手をかけ、右腕を取られた。
「……待っててくれたんですか?」
 とくに保健室へ送ってもらうという約束はしていなかったはずだ。
「姉さんからの厳命」
 一言言われて納得した。 
 ゆっくりと階段を下りつつ、会話がないこの状況をどうにかしたくてテストの話をする。
「あのね、私、まだテストの結果を知らないのだけど、ふたりは知っていたりするかな」
「あ、まだテスト返ってきてないのね?」
 桃華さんがびっくりしたように口にした。