「つらくないか? 大丈夫か?」
「え……?」
「身体も、気持ちも……」
「……身体はつらい。でも、まだ大丈夫。気持ちはつらくないよ」
 それはきっとお母さんのことを指していたと思う。
 何がとはお互いが明確にはしなかった。
 でも、お互いが言わんとしていることは通じていると思えた。
「普段会って話せない分、今のうちにたくさんお話しなくちゃ」
「……大丈夫そうだな」
 ベッドの用意が済むと、蒼兄は「おやすみ」と部屋を出ていった。
 入れ替わりでお母さんが入ってくる。
 お母さんはベッドに横になると、
「学校の話を聞かせて」
 と、乾かしたばかりの髪をふわりとさせて私を見上げた。
 私は行ったことがないけれど、修学旅行や同級生と一緒に夜を過ごすときはこんな感じかな、と思った。
「学校の話……。何度も話してるのだけど、クラスの友達がみんな優しい……。必要以上には体調のことも訊かないでくれるの。でも、ものすごく気にはかけてくれていて、私が無理をしそうになるとすぐに止めてくれる。でもね、そういう優しさが気持ちの負担になることがないから、ちょっと不思議……」
 お母さんは興味深そうに耳を傾けていてくれた。