「翠葉が寝ていることもあるだろうから、蒼樹か唯くんに電話するわ。それで翠葉が起きていたら代わってもらう」
「うん」
 身体を拭き終わると、
「じゃ、私はお風呂に入ってくるから、何かあったら上のふたりを呼ぶのよ?」
 そう言って、部屋のドアを開けたまま出ていった。
 そのすぐあと、唯兄が二階から下りてきた。
 どうやら蒼兄とコーヒーを飲もうという話になり、ジャンケンで負けたらしい。
「リィ? 俺ね、リィの気持ちが軽くなるならどんな嘘でもつくよ」
 唯兄はそう言うと、ふわりと笑って部屋を出ていった。
 目に少し涙が浮かぶ。
 お母さんに嘘をつくことも、唯兄に嘘をつかせることも。
 どっちも本意じゃないからだ。
 でも、今は……今だけは嘘をつきとおしたかった。
「唯兄、ごめんね……」
 けれど、その声は唯兄には届かない――。