光のもとでⅠ

「幸薄い俺なんて一滴の幸せも逃がさないように日々お口にチャックさ」
 と、チャックを閉める仕草を顔の前でする。
「俺、唯の部屋からしょっちゅう呻き声とか喚き声なら聞いてるけど?」
 蒼兄が言うと、
「あれは呻き声や喚き声、発狂って部類でため息じゃないから大丈夫っ」
 唯兄は猛烈に主張する。
「秋斗さんや蔵元さんからの指示ごときで幸せ逃がしてたまるかいっ」
 どうやら、ところ変わっても仕事が忙しいのは相変わらずのようだ。
 四人でお鍋を囲んでいると、ひとつの音が会話の流れを止めた。
 それは、私がお茶碗を落とした音。
「ごめんなさい、すぐ片付けるね……」
「いいよ、俺がやるから」
 と、椅子をに立ち上がったのは私の隣に座っていた唯兄。
「でもっ、手伝う」
「だーめ。リィの仕事はあっち」
 と、テーブルを指差される。
 テーブルを見ると、私の正面に座っていた蒼兄も立ち上がっていて、キッチンへ代わりの入れ物を取りにいってくれていた。
 ただひとり、微動だにしないのはお母さん。