ディスプレイを見たままぼーっとしていると、開いているドアをノックする音がした。
「っ……びっくりした」
 振り返ると蒼兄が立っていて、私は慌ててノートパソコンを閉じた。
「何、考えてたんだ……?」
 メガネの奥から真っ直ぐに見ている目が怖い。
「考えごとは考えごと、だよ……。私にだって悩みのひとつふたつがあってもおかしくないでしょう?」
 わざとらしいくらい笑顔で答えた。
「そっか……そうだな」
 納得はしてないけどね、って顔をして蒼兄は笑った。
「夕飯、あっちで食べられそう?」
「うん、大丈夫」
 差し出される手を取り思う。
 ごめんなさい、と……。
 蒼兄はそんな少しの表情すら見逃しはしない。