痛みがひどくなると、痛覚にしか神経が使われていないんじゃないかと思うほど、ほかのことが何も考えられなくなる。
 自分が何を発しているのか、それすらもわからなくなる。
 十七歳になってようやく、自分に今余裕があるのかないのかを把握できるようになった。
 でも、それがわかったところでコントロールができるわけではない。
 湊先生が注射を打ってくれたあとのことは全く覚えていなかった。
 気づいたら外が真っ暗という程度には時間が経っていたし、先生と栞さんの姿が見えなければお父さんの声も聞こえはしなかった。
 左手の点滴も抜針が済んでいる。
 キッチンからリズミカルな包丁の音が聞こえてくるところから察すると、お母さんが夕飯の支度をしているのだろう。
 蒼兄と唯兄は二階だろうか。
「……少し起きよう」
 あえて声にだし身体を起こす。
 軽い眩暈を感じつつ、ベッドサイドに置かれたお水を口にした。
 デスクに置かれたままのノートパソコンを機動させると、身に覚えのないソフトが起動される。
「……何?」
 ウィンドウの中には蒼兄と唯兄の名前があって、次々と文章が表示される。