私の前に置かれているトレイを蒼兄が下げてくれると、玄関でインターホンが鳴った。
「誰かしら?」
 お母さんがそれに出ると、
「あらっ、大丈夫なのっ!?」
 なんて声が玄関から聞こえてくる。
「それにしても珍しい組み合わせね」
 誰が来たのかな、とドアに目を向けていると、お父さんが立ち上がりリビングへと出ていった。
「静? それと湊先生と栞ちゃん」
 お父さんの言葉に聞き間違いではないだろうか、と自分の耳を疑う。
 少しすると、薄紫のワンピースを着た栞さんが私の部屋へと入ってきた。
 ただただびっくりするだけで私は言葉を発せない。
 栞さんは近くまでくると、「翠葉ちゃん、久しぶり」とぎゅっと抱きしめてくれた。
「しばらくお休みいただいててごめんね」
 少し前とは明らかに体格が違う。
 小柄ではあったけれど、こんなに華奢ではなく、もっと女性らしい身体のラインを持った人だった。