「……お父さんとお母さんには言わないでくれる?」
 蒼兄は、「話による」と答えた。
「ごめん。それなら言えない」
「……翠葉、父さんと母さんだって心配なんだ。少しは気持ちを汲んでやってほしい」
 それはわかる。
 わかるけど、私にも譲れないものがある。
「今、俺を呼ばなかったのは俺にも知られたくなかったから?」
 それはきっと的を射ている。
「唯は知ってたからか?」
 コクリと頷くと、
「そうやって翠葉はすぐにひとりになろうとする」
 と、やるせない顔をされた。
「父さんと母さんに黙ってさえいれば、俺はそっち側にいけるのか?」
 今後はわからない。でも、今なら"Yes"だ。
「なら、言わない……」
 だから教えてくれ、とでも言うように、冷たくなっていた指先を握られた。
 じんわりと蒼兄の体温が伝う。