ドアに目を向けると、唯兄と心なし不機嫌そうな蒼兄が入ってきた。
 そして、一言も喋らず黙々とカイロを用意してくれたのは蒼兄。
「……蒼兄?」
 恐る恐る声をかけてみると、
「どうして唯なんだよ……」
 ムスっとした顔で言われる。
 もしかして電話のことだろうか。
「なんとなく、なんだけど……」
「俺さ、今あんちゃんの部屋にいたんだ。そしたらリィから電話かかってきて、直後からこの状態」
 と、唯兄が蒼兄を指差して笑った。
 間違っても血がつながっていない人を選んでしまったとは言えない。
「……お礼を言いたくて」
 咄嗟に出てきた言葉だったけれど、お礼を言わなくてはいけないのは事実だった。
 ローテーブルに置かれたプラスチックのスプーンとフォークとマグカップ。
「……唯兄が湊先生に伝えてくれたのでしょう?」
「あぁ……ずっとおかしいと思ってたからね」
 そこに、「なんのこと?」と蒼兄が怪訝そうな顔をした。