唯兄が用意してくれたお風呂で、私はいつものように音楽を聴きながら湯船に浸かっていた。
 腕を沈めては浮かべ、浮力を感じながら考えることはひとつ。
 どうしたら両親を仕事場へ戻すことができるだろうか――。
 ふたりとも心配症だからそう簡単にはいかない。
 栞さんがいない今となっては余計に難しいはず。
 でも、いないものはいないのだし、それでもどうにかして現場へ戻さなくてはいけない。
 自宅から指示を出すことができるとはいえ、やっぱり目で見て確認をしなくてはいけないものもあるだろうし、そうしたいであろう人たち。
 お父さんもお母さんも、仕事を途中で放り出せるような人たちではない。でも、私を放っておける人たちでもない……。
「どうしたらいいのかな……」
 よく響く浴室に小さな声が反響する。
 どうしたらいいのかなんて、本当はわかってる。
 耐え切れなくなる前に病院に入る――。
 ただ、それだけ……。