「ま、上がって?」
 軽やかなお母さんの声に続き、
「お邪魔します~……」
 と、若い女の人の声がする。
 語尾が疲労を物語っている。
 仕事先からここまで来たのだろうか。
「りっちゃん、何飲むー?」
 キッチンからであろうお母さんの声に、
「あっまーいミルクティ希望ですっ!」
「了解っ」
 甘い飲み物を所望するあたり、やはり"りっちゃん"と呼ばれた人はお疲れなのだろう。
「どうだった?」
「どうしても選びきれなくて十種オーダーかけてきちゃいました」
「ふーん、元は取れそうなの?」
「そうですねぇ……ガーデンパレスで使えなくても絶対にほかでは買えない生地なので、問題ないと思います」
「りっちゃんがそう言うのだからどれも問題はないでしょうね。私の代打、お疲れ様」