「胸じゃなくて、肩……?」
 言われてはっとする。
 今、自分が押さえているのが肩であることに。
 唯兄に薬を飲むように促され、その場をごまかすように薬を飲んだ。
 ダランと落としていた左手をお母さんが優しく握ってくれたけど、その手は少し震えているように思えた。
 でも、お母さんは笑顔を作って全く関係のない話をしてくれた。
「静から唯くんのことは聞いたわ。彼が電話で話していたもうひとりのお兄ちゃんね?」
 こくりと小さく頷くと、お母さんは心配そうな顔をして唯兄を見た。
「唯くん、仕事に戻っても大丈夫よ」
 どこか気遣っているところを見ると、もしかしたらお姉さんのことも聞いたのかもしれない。
「いえ……。何もできないけど側にいたいんです。どうでもいい話ならずっとしていられるし、セリにはできなかったことを全部したくて……」
 最後は搾り出すような声だった。