静さんは帰ったのかもしれない。でも、家にひとりではない――。
 鎖骨から肩に走る痛みを堪えつつ、右手で肩を思い切り掴む。
 うめき声をもらすくらいには痛かった。
 けれども、まだこの季節は終わらない。
 すぐにパタパタと音をさせて唯兄が二階から下りてきた。
「痛み?」
 コクリ、と頷く。
「頓服持ってくる。ちょっと待ってて」
 と、部屋を出て行った。
 この部屋にも薬はあるけれど、薬箱はリビングに置いてあるからそこから持ってくるのだろう。
 薬の場所はお母さんから聞いたのかな。
 唯兄を待っていると、唯兄が戻ってくるときにはお母さんも一緒に入ってきた。
 けれども、お母さんは心配というよりは入ってくるなり怪訝な顔をした。