「この家の裏手には運動公園があるんだ。日ごろ運動不足の若槻にはいい散歩コースになるんじゃないか?」
「日ごろから頭脳運動が激しくてブドウ糖不足気味の俺には屋内で糖分補給のほうが重要です」
「そんなこと言ってないでたまには外に出ろ。季節によって咲く花が違うというから、翠葉ちゃんと行ってこい」
 その言葉にもしかしたら、と思った。
 私が去年そこで倒れたことも、そのあとの入院が長引いて留年していることも、静さんは知っているのかもしれない。
 唯兄にはその辺の話をしたのかは覚えていない。
 そもそも、こんなに親しくなるとは思ってもいなかったのだ。
 人生ってわからないものだな……。
 薬を飲み椅子から立ち上がると痛みが走った。
「……リィ?」
 動きの止まった私に唯兄が声をかける。
 きっと静さんの視線もこちらを向いている。