「以上、ご報告でした」
 そこにタイミングよく唯兄が現れた。
「リィ、帰れる?」
「うん、大丈夫」
 これ幸い、とゆっくりと席を立つ。
「あんた、幸倉に戻っても栞はまだ動けないのよ?」
 背から鋭い一言が投げられた。
 でも、そんな言葉は想定済み。
「わかっています。先生、私は栞さんが来てくれてものすごく嬉しかったけれど、それは"普通"じゃないの。それが当たり前になっていたけれど、今年の二月からの出来事であって、それまでの御園生家に栞さんはいなかった。……本当の元に戻るだけです」
 湊先生は何か言いたそうに口を開いたけれど、何も言わずに口を閉じた。
「リィ……俺はどうなるんだよ」
 あ、そうだった……。
「唯兄も一緒に幸倉に来てくれるんです。でも、お仕事は……?」
「蔵元さんの了解得たから幸倉で仕事するよ」
 当然、といった感じで言われる。