手、というより指が痛くて、力を入れることができなかったのだ。
 仕方なくペンに持ち替えて紙の上を滑らせていたけれど、とても読みづらい字しか書くことができなかった。
 最終日は湊先生と川岸先生がついていて、さすがにペンに持ち替えたときには怪訝な顔をされた。
 これ以上、隠すことができなかった。
「御園生、少し前から気づいてはいたんだが、おまえ――」
「痛みが手にまで及んでる?」
 川岸先生の言葉の先は湊先生が口にした。
 司先輩とそっくりの顔で眉間にしわを寄せている。
「……主には左手なんですけど、時々右手も……」
「……今何を言っても仕方がない。とりあえず試験を受けなさい」
 試験が終わるとすぐに診察が始まった。
「廉太、診察するから外に出てて」
 川岸先生が廊下に出ると、すぐに問診が始まった。