お風呂を上がる前の最後の儀式――といっても、冷水を身体の末端に浴びせるだけ。
 シャワーのコックをきゅ、と捻り私は思う。
「まだ大丈夫……。まだ、お風呂に入る余裕はある」
 それは一種私のバロメーターだった。
 バスルームを出て洗面所の鏡に映る自分を見る。
 だいぶ痩せた……。
 自分でもわかるそれを隠すようにバスタオルに包まれる。
 そしてもう一度鏡を見ると、自分の目に視線を合わせた。
「テストが終わったら帰ろう、幸倉の家に……。だから、それまではがんばって――」