臆病な自分を秋斗さんがそれでも好きだと受け入れてくれたから……?
 ちゃぷん――。
 湯船で前屈をすると、身体がすっぽりとお湯に浸かり、周りでコポコポと自分の吐き出した空気が浮上していく音が聞こえる。
 ゆらゆらゆらゆらお湯の中。
 ずっとこの中にいられたらいいけれど、私の息はそんなに長くは続かない。
 息苦しさを覚えて上体を起こす。
 湿気を帯びた酸素薄めの空気を肺いっぱいに吸い込み、
「ただ、ずるいだけじゃない……」
 前には進めず、なかったことにはできず――。
 自分の不甲斐なさを改めて感じることで涙があふれてきた。
 喉の奥からこみ上げてくる嗚咽を必死に堪え、涙が枯れるまで泣いた。
 お風呂はいい。
 蒼兄も唯兄もここには立ち入らないから。
 栞さんはきっと入ってきちゃうけど。
 そう思うと少しおかしくて、ほんの少し笑うことができた。