「翠葉ちゃんに自分を責めてもらいたくない。これ以上、翠葉ちゃんに負荷をかけたくない。それでなくとも、君は自分と闘うのに全力投球だろう?」
 優しすぎる気遣いに、また目から涙が零れ落ちる。
「俺のことは必要以上に気にしなくていいんだ。俺は翠葉ちゃんより九つも年上なんだよ? 一応立派に社会人で大人なんだ。処世術だってそれなりに心得ているしね。だから、大丈夫」
 秋斗さんは大人だからこんな対応ができるの?
 私はてっきり呆れられて嫌われてしまうかと思っていたのに……。
 大人だからそんなに余裕があるの?
「嘘じゃないよ。たとえばこんなふうに距離は取るけど、でも、会いに行くし話しもできる。全然会わなくなるわけじゃない。前みたいにお茶を飲んでケーキを食べて笑って話をしよう?」
「……私、わがまま――」
 すごくわがままだ。
 好きだけど付き合えなくて、付き合えないけど嫌われたくはなくて、怖いと思っているのに会えなくなることがもっと怖いなんて――。