頬に涙が伝う。
 自分が描いていたシナリオと違いすぎる現況にパニックを起こしそうだ。
 私は呆れられて嫌われるはずだったのに。
 どうして……。
「ただね、ひとつだけお願いがあるんだ」
「……おね、がい?」
「そう……。これで恋愛に恐怖を抱かないでほしい。こんな形だけが恋愛じゃないから。……人を好きになること、それだけは怖がらないでほしい」
 何が起っているのかわからなかった。
 どうして呆れられる予定の秋斗さんに謝られてこんなに気遣われているのか、意味がわからなくてなんて答えたらいいのかわからなくて――。
 ただ、私も伝えなくてはいけないと思った。
 酸素が足りてないわけはないのに、この部屋の酸素が薄い気がする。
 その酸素を必死で吸って、言葉を発するためにお腹に力を入れた。