「リィ、嫌なら嫌でいいんだよ?」
 唯兄はそんなふうに声をかけてくれるけど――。
 嫌よりも、"怖い"……。
 でも、いつまでも避けていてはいけない。
「嫌、ではないの。……クッキーのお礼も言わなくちゃいけないから……」
 だから、"会う"の一言が口にはできなかった。
「じゃ、俺と唯はリビングにいるから先輩を呼ぶよ?」
 どこか確認のように問われた声に、私はぎこちなく頷いて了承した。
 窓際に座っていた私は、気づけばデスクの前まで――ドアと対角線を結ぶ場所まで移動していた。
 デスクの足元に置いてあるハープに手を伸ばし引き寄せる。
 ぎゅっとハープを抱きしめ、自分を叱咤する。
 答えは出ているし、呆れられることも想定済みでしょう!?
 今さら何を怖がったところで何も変わることはない。
 コンコン――。