痛みで目が覚めてから不安に駆られていた自分が嘘のよう。
「唯兄、手……貸して?」
「あぁ、手、つなぐのね」
 ベッドマットに両肘をついて、勝手をわかったふうに手を握ってくれた。
 唯兄の手は男の人の手というよりは、女の人の手みたい。
 きれいすぎて嫉妬してしまうくらいに白く滑らかな手。
 ゴツゴツしてない。でも、小さいわけでもなくて、私の手よりは少し大きい。
「これは精神安定剤?」
 訊かれて頷く。
「俺、兄貴っぽいなぁ~」
 唯兄は満足そうに目尻を下げた。
「朝って静かだね……」
 外は意外と騒がしいのに、なぜか静かだと感じる。
 風の音と木がしなる音。風でポーチがカシャンカシャンと鳴る音。
 決して静かなわけではないのに、人の気配がないと静かだと感じる。
「あのね、うちにはお庭があって夏の朝は草の……緑の匂いがするんだよ」
「あ、御園生家?」
「うん」
「そっか、楽しみだな。俺一軒家って初めてなんだ」