光のもとでⅠ

 洗面所の引き出しに入っているエッセンシャルオイルの小瓶を並べ、チョイスに悩む。
「お風呂から上がったら少し勉強するし……」
 ローズマリーかな。
 ローズマリーにレモングラス。それから、ゼラニウム……。
 今回の生理痛が少しでも軽く済みますように、と願いをこめて自分が苦手とするゼラニウムを手に取った。
 お風呂から上がると須藤さんが帰るところだった。
 海斗くんと司先輩は少し前に帰ったという。
「お嬢様は長風呂なのですねぇ……」
 まじまじと見下ろされる。
「須藤さん、セクハラ~。オーナーにちくっちゃおうっ!」
「若槻っ」
 須藤さんは唯兄を怒鳴りつつ、こちらを気にして「そんなつもりは全くなかったのですが」と頭を下げる。
「わ、あのっ、全然気にしてないのでっ。私、夏でも汗をかくことが少ないので、お風呂のときにしっかり汗をかくように半身浴してるんです」
「はぁ、そうでしたか……。私がこんなに長い時間お風呂に入っていたら中で死んでますね……」
「俺も……」
 そんな軽い談笑をしてから須藤さんを見送り、私は自室で勉強を始めた。