「違うか?」
 訊かれて、縦に首を振る。
「どうやら当たりのようですね。大丈夫ですよ。小さいものをご希望でしたら小さめに握りますから」
 須藤さんは初めて会った日のように優しく笑ってくれた。
「でも、須藤さんの言うとおり。梅よりは鮭やおかかのほうがいいと思う」
 以前見下ろされたまま、司先輩に言われた。
「どうして……?」
 カウンターの中から見上げると、
「今の翠の胃の状態を考えたらそうなる。鎮痛剤の使いすぎであまりいい状態じゃないだろ。それなら酸が強い梅干よりも鮭やおかかのほうがいい。昆布は消化に時間がかかるから鮭かおかかがベスト」
 と、より丁寧に教えてくれた。
「さすが、司様ですね」
 と、須藤さんが口にすると、
「当たり前でしょー? 何年私の弟やってると思ってんのよ」
 と、少々酔っ払い気味の湊先生が酔ってきた。
「須藤さん、これ、下げてください」
 と、司先輩が湊先生の手からグラスを奪った。