「では、明日はリゾットかお雑炊もお作りいたしましょうか」
「あ、あのっ――」
 困った……。
「なんでしょう?」と言うような視線が返ってきて、苦し紛れに「おにぎり」と答えた。
「おにぎり?」
 唯兄が復唱して首を傾げる。
「はい……あの、梅のおにぎりが食べたい、です……」
 おにぎりなら手で食べられる。
「梅のおにぎりがお好きなのですか? 鮭やおかか、昆布はいかがでしょう?」
「あ、えと……なんでも好きです」
 でも、須藤さんの手を見て想像してしまう。
 その大きな手が握るおにぎりとはどのくらいの大きさだろうか、と。
 じっとその手を見ていると、
「どうかなさいましたか?」
 と、訊かれる。
「須藤さんの手だとどのくらいの大きさのおにぎりが作られるのか……」
 今までの会話にはいなかった人の声が加わった。
 びっくりして声の主に視線を向けると、司先輩がカウンター向こうからこちらを見下ろしていた。