コンコン――。
 ノックの音……。
「入るよ」
 と、ドアを開けて入ってきたのは静さんだった。
 窓から差し込む光はすでに薄暗い。
 けれど電気は点けずに入ってくる。
「身体の具合はどうだい?」
「例年と同じです……」
「そうか……。じゃぁつらい時期なのだろうね」
「……両親から聞いているんですか?」
「あぁ、非常に大まかにだけどね。湊も楓も守秘義務とかで教えてはくれないからな」
 お医者様だものね……。
「そろそろ夕飯なんだが起きられるかい?」
「はい」
 でも、食卓が怖い――。
「……どうかした?」
「いえ……食欲がなくて」
「須藤の料理だ。きっと大丈夫だよ」
 静さんに大丈夫だよ、と言われると、根拠はなくても大丈夫な気がしてくるから不思議。
 そういう要素を持っているからこそ、人を率いることができるのだろうか。