「逆探知とか絶対無理そう……」
 思ったことを口にすると、
「司か」
 と、楓先生が面白そうに笑った。
「マッサージに来るんだろ?」
「……だそうです。でも、私お薬飲んだら寝ちゃうんですけど……」
 と、目の前にある薬をじっと見る。
「リラックスして寝ちゃってるくらいがちょうどいいよ」
 そんなものなのだろうか……。
 玄関で音がすると、司先輩は一枚の紙を手に持って入ってきた。
「とっとと薬飲んで横になれ」
「……それ、なんですか?」
「今、海斗に解かせてる問題の答え」
 と、見せてくれる。
「あいつ、今回の数学はやたらめったらできが悪い」
 と、ブツクサ口にする。
 ……司先輩が言うところの"できが悪い"とはどのあたりにボーダーラインがあるのだろう。
 テストの点数でいうところの百点以下がすべて該当しそうで怖い。