「ご迷惑おかけしてすみません……」
 あまりにも申し訳ない状態だ。
 せっかくのお休みなのに、患者を見ている羽目になるなんて……。
「……ずるいよねぇ? 若槻くんはちゃっかりとお兄さんにおさまったのに、俺は先生だもんね?」
「……え?」
「俺も翠葉ちゃんみたいな妹ならぜひほしいよ」
「……私も、楓先生みたいなお兄さんなら大歓迎です」
 真面目に答えたつもりだったけど、楓先生はクスクスと笑いだした。
 すると、どこからか私の携帯が鳴る音がした。
「あ、これ」
 と、楓先生が胸ポケットから取り出したのは私の携帯だった。
 ディスプレイには"藤宮司"の文字。
「もしもし……?」
『具合は? っていうか、昼は食べられたのか?』
「はい、今食べ終わりました。痛みは少しだけ……」
『今からマッサージしに下りるから』
「えっ!? でもっ、先輩勉強はっ!?」
『一時間くらい問題ない。じゃ』
 携帯からは、ツーツーツーツーという音が虚しく響くのみ。
 通話時間は二十四秒……。