光のもとでⅠ

 リビングへ行くと、キッチンから須藤さんが出てきた。
「お邪魔してます」と声をかけられ、「こんにちは」と挨拶を返す。
 食材がごった返しているキッチンの中には唯兄もいた。
「フルーツサンドとアンダンテのケーキ、どちらもございますよ」
 須藤さんに言われて、フルーツサンドをください、とお願いした。
 ケーキはフォークをもつ必要がある。
 シャーペンやお箸と同じように痛みが走るのは嫌だったし、楓先生が側にいるからなおのこと、変な行動を取ってばれてしまうのが怖かった。
 夜ご飯――お食事会はどうしよう……。
「リィ、どうかした?」
 フルーツサンドをプレートに乗せて持ってきた唯兄に覗き込まれる。
「え? あ……テストの出来が悪くて」
「そんなテストの一回や二回、どってことないでしょ? 卒業できりゃいーんだよ」
「って言いつつさ、若槻くんは海新高校の首席だったんだろ?」
 楓先生の言葉に唯兄を見ると、
「ははは、だって、俺学費免除で入ってるもん。それこそ首位キープしなかったら追い出されちゃうよ」