「翠葉、すごくつらそうな顔してる。そうまでして笑わなくていいのに……」
 咄嗟に隣に座る蒼兄の顔を見る。と、
「訊かないでいてやることはできる。でも、つらい顔をしているのは見なかったことにはできない」
「っ……蒼兄、テスト終わったら、帰りたい……」
 右側に座る蒼兄の手を握った。
 握った手が震える。
「いいよ、そうしよう。ここはもともと家じゃない。俺たちの家は幸倉だ」
 その言葉にコクリと頷く。
 理由は訊かずに了承してくれた。
 そこに、「たのもーっ!」と廊下から唯兄の声がかかる。
「くっ、唯か。翠葉、ドア開けてやんな」
 そう言われてドアを開けに行くと、トレイに三人分のお茶とフルーツサンドを乗せた唯兄が立っていた。
「俺も入っていい?」
「どうぞ」
「じゃ、失礼しまーす」
 ドア口で唯兄の動きを見ていると、
「ほら、お茶冷めちゃうよ」
 と、席に着くよう促された。