「どうした? それ、抱えて座ってるときは何か悩みごとがあって落ち着きたいときだろ?」
 蒼兄には隠し事なんてできないのかもしれない。
「司から聞いた。勉強一緒にしてないんだって?」
「うん……なんとなく、自分のペースのほうが今は楽で……」
「そっか……」
 私、ちゃんと笑えてるかな。
 自信がないからつい俯き気味になってしまう。
 本当は、シャーペンを持ったりするのがつらくて、声に出して覚える方法しか取れないからだった。
 今回、暗記科目はかなり悪い点数になりそう。
 復唱を繰り返してはいるけれど、書かないと漢字や単語のスペルが覚えられない。
 そんな中、タオルをかぶせてシャーペンを持つと少しだけ楽だと判明した。
 でも、そんな姿を見られるわけにはいかなかったから――。